還暦おやじのセミリタイアライフ

55歳で早期退職したサイドFIREおやじが日常と昔話を綴ります

家計簿と資産の年末棚卸し

先週末、無事に仕事納めを迎え、翻訳業とエンジニア業、二足の草鞋による請求書をそれぞれ取引先に送った。やれやれ。おつかれさま。

1月6日までの長い冬休みが、ようやく幕を開けたところ。のんびりしたこの解放感の中で、2025年の家計簿と資産の棚卸しをしてみた。

 

膨らんだ支出とその内訳
今年1年間の支出を精査したところ、税金や社会保障費を含めた総額は410万円強に達した。昨年の約350万円と比較すると、60万円ほどの増加である。なお、年末の楽天ブラックセールで投じた「爆買い」の支払いは年明けに持ち越されるため、この数字には含まれていない(怖っ!)。

支出増の主な要因は、皮肉にも昨年の収入が中途半端に好調だったことにある。久しぶりに住民税非課税世帯の枠を外れたことで、国民健康保険料が跳ね上がり、妻の国民年金免除もなくなった(私は60歳払込終了で逃げ切りに成功済)。住民税そのものは所得割のみなのでしれた額だが、改めて社会保障制度の重みを痛感する結果となった。

また、今年は夫婦ともに高額医療費が重なった年でもあった。妻は眼瞼下垂の手術(保険適用)と片頭痛の治療、私は後頭部の赤痣(あかあざ)を除去するレーザー治療を受けた。これらは生活の質を向上させるための前向きな「投資」ではあるが、家計の数字を押し上げたのは事実だ。

 

赤字を覆す「資産運用」の力
一方で、今年の手取り収入は約280万円(給付金や還付金40万円を含む)となった。住民税非課税枠を大きく超えたとは言え、所詮セミリタイアの1日2〜3時間仕事である。効率という点では抜群だが、総額はたかがしれている。支出410万円から収入280万円を差し引けば、単純計算で130万円の赤字となった。

しかし、ライフプラン表の資産総額を見ると、4月のトランプショックから絶賛V字回復中で、この1年間では約170万円のプラスに転じている。つまり、家計の赤字を補填した上でさらに増えているということは、資産運用の成果が年間で約300万円ほど出た計算になる。

新NISAの「オルカンeMAXIS Slim 全世界株式)」全力投入と、個別日本株のスイング売買という布陣で挑んでいるのだが、暴落に備えて現金比率を大きくとっている現状としては、上出来すぎる成果だ。

 

セミリタイアの継続と、未来への備え
来年も年始から、手元にある現金を年初一括でNISA枠へ投入していく予定だ。もし今年と同水準の地合いが続くならば、来年末にはさらなるリターンが期待できるだろう。そうなれば「もう仕事を辞めてしまっても良いのではないか?」という誘惑が頭をよぎる。65歳からの年金受給を見据え、贅沢を控えて細々と暮らすのであれば、あと4年、計算上はなんとかなりそうだからだ。

しかし、何が起こるか予測不能なのが今の市場環境。その上、翻訳業務は常にAIによる代替の脅威にさらされており、エンジニアの仕事も円安の動向次第で顧客プロジェクトがいつ打ち切られるか分からないときている。

何より、今の私は「理想の仕事を少しだけしながらのセミリタイア生活」という、稀有なバランスを手に入れている。せっかく手に入れたこの環境を自ら手放すのは、あまりに惜しいし馬鹿らしい。不測の事態に備えつつ、自分の運とスキルが通用するうちは粘り強く続けていくほうが無難であろう。

 

来年は海外出向していた息子夫婦が3年半ぶりに帰国する。会社から大学院(MBA)に行かせてもらえるそうだ。なんとも羨ましい話である。おかげで、久しぶりに近くに家族が住んでいるという安心感が得られる年になりそうだ。

来年も家族全員にとって、良い年でありますように。

 

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AIと未来の知的労働


昔の同僚から依頼されていたエンジニアの仕事が始まった。日本の顧客企業とドイツ本社との間に立ち、技術的なコミュニケーションをサポートするという役割だ。かつてはよくこなしていた業務だが、最後に携わってから実に10年以上が経過している。ブランクへの不安はあったものの、蓋を開けてみれば新しい技術に触れることは刺激的で、なかなかに楽しい時間を過ごせている。

 

週に5時間から10時間程度の業務量とはいえ、長年続けている翻訳の仕事と並行しているため、今までよりは少し忙しく過ごしている。おかげでこのブログも放ったらかしだ。この状況を乗り切るためには、業務の効率化が不可欠だ。これまでも翻訳業務には翻訳ソフトや校正AIを活用して生産性を高めてきたつもりだったが、最近リリースされた「Gemini 3」を試験的に導入してみて、その認識は根底から覆された。

このGemini 3、一言で言えば「優秀すぎる」のだ。 これまで使用していたChatGPTなどの生成AIも十分に便利ではあったが、それでも最後は私の技術的な経験値による手直しが必須だった。しかし、今回の相棒は違う。出力された訳文に対し、私が手を加える必要性をほとんど感じないレベルで完成されているのだ。おかげで、翻訳にかかる時間は従来の半分以下にまで短縮された。

新たにエンジニアとしての仕事が増えて忙しい、などと嬉しい悲鳴を上げていられるのも今のうちだけかもしれない。この圧倒的な性能を目の当たりにして、私は確信した。早晩、翻訳という仕事そのものが消滅する。「翻訳者」などという職種が不要になる時代は、もうすぐそこまで来ているどころか、実質的にはすでに突入していると言っていい。

 

その衝撃冷めやらぬまま、息抜きがてらにGemini 3に搭載された画像生成AI「Nano Banana」を試してみた。愛猫たちの画像を作らせてみたのだが、これまた言葉を失う出来栄えだった。従来の画像生成AIにありがちな、どこか西洋の古い絵本を思わせるような独特のタッチではない。そこに現れたのは、まるでカメラで撮影したかのような、圧倒的なリアリティを持つ「写真」そのものだった。

さらに悪ノリをして、その静止画を今度は動画生成AI「Veo」に読み込ませてみた。すると、画面の中の愛猫たちが、まるで生きているかのように動き出したではないか。毛並みの揺らぎ、光の加減、そのすべてが自然で、不気味さすら感じるほどの完成度だ。

翻訳者だけではない。イラストレーターも、動画クリエイターも、YouTuberでさえも、うかうかしてはいられないだろう。これほどのクオリティのものが、誰でも一瞬で生成できてしまうのだから。

 

私自身はすでに還暦を過ぎ、人生の余暇として好きな仕事を選んでこなしている身だ。いつ仕事が無くなろうと、あるいはAIに取って代わられようと、大きな痛手ではない。しかし、これから社会に出ようとする若者たち、あるいはキャリアの途上にある現役世代にとって、これは由々しき事態だ。

かつて人間が担ってきた、情報の整理や変換、基礎的な創造といった「簡単な知的労働」の90%は、もはや人間が汗をかいて行う必要のない領域へと移行してしまったのだろう。テクノロジーの進歩は喜ばしい反面、人間から「考える」という特権を奪い去ろうとしているようにも思える。この便利な相棒たちがもたらす未来は、人間にとってユートピアとなるのか、それともディストピア……。 モニターの中で無邪気に動く愛猫のAI動画を眺めながら、なんとも複雑な思いでいる。

 

 

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5年ぶりの忘年会に参加して

早期退職してから、気がつけばもう5年が経つ。ちょうどコロナが世界中で猛威をふるい始めたころであり、会社も完全リモート勤務へと舵を切った時期であった。当然、送別会も開いてもらえない状況の中、会社を去ることになった。それでも、最後の出社日にはグループ全員がわざわざ出社し、私がオフィスに姿を見せるのを待っていてくれた。その日を最後に、彼らと直接顔を合わせる機会を持たぬまま、5年が過ぎていったのである。

 

その間、世界も日本も大きく変わった。コロナ禍、急激な円安、主流技術の移り変わり…。業界構造の大幅な変化に伴って仕事の在り方も劇的に変わり、かつて10名ほどいたグループのメンバーの多くが、それぞれ転職し新たな道を歩み始めていた。そんな彼らから久しぶりに声をかけてもらい、昨晩、5年ぶりの忘年会に参加することとなった。

 

顔を合わせた瞬間、5年という時間が一気に縮まったような気がした。懐かしい顔ぶれは皆元気で、それぞれが新しい会社で活躍している様子が伺えた。若手の多くは結婚し、子どもが生まれ、家を建てた者もいれば、子どもの進学に悩む者もいる。今年中に海外移住を決断したメンバーまでおり、皆がそれぞれの人生をしっかりと歩んでいることが嬉しくもあり、頼もしくもあった。

 

思えば彼らは、12〜3年前に私が責任者として立ち上げた事業グループの第一期の仲間である。全員私が採用した人たちである。そんな私が先にセミリタイアしてしまい、その後事業環境の変化に伴いグループは縮小を余儀なくされたのだが、こうしてまた笑い合える仲間として集まれたことは、何よりもありがたいことである。お酒が進むにつれ、当時の思い出話が次々と飛び出し、皆で大笑いしながら語り合った時間は実に貴重であった。またいつか、この仲間たちが再び集まる機会があれば、ぜひ参加したいと思う。

 

そして、あっという間に楽しいひとときが終わり、いつもより遅い時間に帰宅した私を、3匹の愛猫たちは寝ずに玄関で待っていてくれた。ドアを開けてその姿を見た瞬間、心の底からじわっと温かさがこみ上げてきた。かつては仕事と責任に追われていた自分も、今では家族と猫たちに囲まれた穏やかな日々を送っている。もう昔の自分ではないのだと改めて実感した夜だった。

 

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お気に入りの散歩コース


セミリタイア生活を始めてからというもの、雨や猛暑、極寒の日を除けば、毎日のように午前中の散歩を日課としている。自宅周辺にはいくつか散歩コースがあるが、私がとりわけ気に入っているのが、住宅街を縫うように流れる用水路の川べりである。整備された遊歩道というほど立派なものではないが、古くからの住宅街の中で落ち着きがあり、歩くたびに時間の流れがゆったりと戻ってくるような感覚を覚える。

 

この用水路の歴史は意外と古く、紀元は江戸時代にまで遡るらしい。もともとは農業用水として地域の田畑を潤していたのであろうが、今では農地も姿を消し、用水路は住宅街の中で細く長く命をつないでいる。人工的な施設でありながら、周辺の暮らしに潤いをもたらす存在として、地域の人びとに大切にされてきたことが伺える。

水辺を歩くと、四季折々の表情があり、思いがけない自然との出会いもある。春は桜が水面を覆うように枝を伸ばし、それが終わればツツジ、梅雨が近づけば紫陽花が色を添える。秋になれば柿や柑橘類が実をつけ、冬の澄んだ空気の中では鳥たちの声がよく響く。シロサギやカルガモの親子はもちろん、時にはカワセミの鮮やかな青、あるいはジョウビタキの橙色が目に飛び込んでくる。こんな都会の真ん中で、これほど多様な鳥たちが見られるのは、この古びた用水路のおかげに違いない。

 

周辺には立派な邸宅も多く、よく見ると同じ苗字の表札が並んでいる。代々この土地を守ってきた大地主の家々であろう。彼らが用水路や周辺の緑を維持し続けてきたからこそ、今私たちが散歩を楽しめているのだと思う。もっとも近年は、相続した広大な土地の管理に困ったのか、屋敷を手放す例も増えている。すると、外国人労働者たちの手であっという間に更地となり、そこに狭小住宅がいくつも並ぶ。人が増え、緑の管理が行き届くようになるのであれば、悪いことではないだろうが、長年続いてきた風景が変わっていく寂しさも否めない。

 

私はといえば、呑気なマンション暮らしの一人として、この用水路を散歩道として享受しているだけの身である。管理の苦労を担ってきた人びとに比べれば、偉そうなことを言う資格はない。それでも、静かに水が流れ鳥が憩うこの風景が、これからも大切に守られていってほしいと願わずにはいられない。セミリタイア後の穏やかな朝の時間を支えてくれる、かけがえのない場所であるからだ。

 

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紅葉撮影と副業準備

昨日、今日と関東地方は見事な秋晴れに恵まれた。毎週金曜日は仕事を休みにしているため、妻と二人で近所へ買い物に出かけたついでに、最近購入したInsta360カメラを持って散歩撮影を楽しんできた。このカメラは前後に180°の超広角レンズを備え、合わせて360°を一度に撮影できる優れものだ。強力な手ブレ補正機能のおかげで、歩きながらでも滑らかな映像が撮れる。何より、全方向を一度に記録してしまうため、撮影中に画角を気にする必要がなく、とにかくカメラを回しておけばよいという気軽さがありがたい。後で専用ソフトを使って好きな方向を切り出せば、さまざまな視点の動画が自在に作れてしまうのである。


今日はそのカメラを片手に、色づき始めた木々の下を歩き回り、青空と紅葉のコントラストが映える場所を探しながら撮影した。つい先日まで散歩すると汗ばむ日もあったため、紅葉にはまだ早いかと思っていたが、意外にも黄緑から黄色へと変化しつつある葉が秋の陽ざしに照らされ、きらきら輝いていた。水辺にはカモのカップルも飛来していた。家の近所でここまで画になる風景が撮れるとは思っていなかったのだが、実際編集してみると十分に美しい。これならわざわざ人混みの名所に行かずとも、家の前でいつでも撮影できる。練習のつもりで出かけた散歩が、思わぬ発見となった。


一方、今週は、以前の会社の外国人同僚から依頼された新しい仕事の準備も始まった。まずはNDA(機密保持契約)を締結し、プロジェクト関連の技術資料にアクセスできるようにしたところである。現在はその会社(ドイツ)のメールアドレスを作成してもらっている最中だ。フリーランスとはいえ、国内の顧客とGmailで技術情報をやりとりするわけにはいかない。名刺も準備してもらう予定だ。名刺なんて持つのは5年ぶりのことである。今は週一回のWeb会議の技術通訳に備え、Webカメラやヘッドセットを物色している。ちょうどAmazonBlack Fridayが始まるので、うまく安く揃えたいところだが、間に合うかな…。


久しぶりの“翻訳以外”の仕事、最新技術を扱うということもあり、少しワクワクしている。マネージャーでも正社員でもないフリーランスコンサルタントという立場は、現役時代とは違い気楽でよい。時給もすでに決まり、スタートすれば3〜4カ月の間で月10万円ほどの収入が見込める。なかなか割の良いアルバイトだ。来月早々には始まってほしいと思っている。秋晴れの散歩と新しい仕事の予感が、静かな高揚感をもたらす一日だった。

 

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ささやかな幸福を大切に…

故郷で自動車整備工場を営む友人が、息子さんがはまったネットワークビジネスに自らも会員となった…そんな話を1カ月ほど前に書いた。まさに「ミイラ取りがミイラになった」典型例だと。その後、あえて彼とは連絡を取らずにいる。怪しい商品を勧められても困るからだ。「君子、危うきに近寄らず」である。


今朝、ベッドから出たばかりでまだ寝ぼけ眼の私に、妻が「見て!見て!」とスマホを差し出してきた。妻がフォローしている、友人の奥さんのインスタだった。見たことのない華やかなドレス姿で、何やら楽しげなパーティーの写真。「文字もよく読んで!」と言われ、慌てて老眼鏡を掛けてキャプションを見ると…「出会えてよかった!◯✗△▼ありがとう!!」。その瞬間、一気に目が覚めた。◯✗△▼とは、あのネットワークビジネスの元締め会社の名前である。

どうやら彼女が参加していたのは、アーティストのコンサートなどではなく、その会社の全国大会的なイベントだった。写真には私たちと同年代と思われる中高年の女性たちが、ドレスアップして並び、豪華なテーブルを囲んで笑顔を見せている。まるでグラミー賞のアフターパーティーのような雰囲気だ。キャプションを読み進めると、それが会社の◯周年記念パーティーだとわかった。

 

普段は2匹の飼い犬を溺愛し、犬と一緒に行ける場所しか出かけない人が(旅行用にキャンピングカーまで買ったほどだ)、その犬を家族に預けてまで一人で東京の会場に出向いたらしい。朝からめっちゃショッキングな情報だった。

あの冷静だった友人一家が、ここまで深みにハマっているとは…。息子さんの問題で相談を受けたのが今年4月。友人自身が会員になったのが9月。そして11月には奥さんまでもが完全にのめり込んで、すっかり洗脳されている。これはもう説得の余地はないだろう。来年には整備工場の事務所が「核酸ドリンク」のショールームになり、倉庫には在庫の段ボールがうず高く積まれている光景が目に浮かぶ。数年後、過去に幾度となく見てきた他の「被害者」と同じ道を、この友人家族が辿っていないことを願うばかりだ。だが経験上、残念ながらその願いは叶いそうもないことは理解している。


久しぶりに雲ひとつない秋晴れの空の下、妻と買い物に出かけた。毎年買いそびれるクリスマス用のレープクーヘン(ドイツのジンジャーブレッドのような焼き菓子)を今年は無事に手に入れることができた。あと2週間でアドベントが始まる。帰宅後、おいしいコーヒーを淹れ、気持ちよさそうに昼寝する猫たちを眺めながら、穏やかな午後を過ごした。

こんな何気ないひとときこそ、本当の幸せなのだと思う。つまらない金儲け話に心を奪われ、このささやかな安らぎを失わないようにしたいと、しみじみ思った。

 

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詐欺のお誘い…?

先日LinkdInを通じてコンタクトしてきた昔の同僚(在日外国人)と、ついに昨晩食事に行ってきた。そう、前回のブログで書いた、あの怪しい「ビジネス」の香りがプンプン漂う「お誘い」である。

待ち合わせは午後6時半、ハチ公前。渋谷に行くのは7〜8年ぶり、夜の渋谷となるともう10年以上前になる。自宅から電車でわずか20分の距離なのに、到着したあと駅構内を出るまでが長い。改札を抜けても、人、人、人。しかも私の知る渋谷駅とはまるで別物である。テレビでたびたび報道されている「100年に一度の大工事」の真っ最中なのだ。完成まで100年掛かりそうだ。案の定、迷いに迷ってハチ公前に出るまで10分もかかった…マンマ・ミーア。

 

ようやく辿り着いたハチ公前は、人の海であった。ハチ公と写真を撮る観光客、スクランブル交差点を撮影する人々、そして私のように誰かを待つ人々。ざっと見渡したところ、6〜7割はインバウンドの外国人観光客だ。まるでどこかの国際空港のロビーにでもいるかのようである。

正しい日本人代表として約束の10分前に到着した私は、周囲を見回したが案の定、相手の姿はない。外国人のお手本通り、約束を15分過ぎてから彼は現れた。久しぶりの外国人との待ち合わせで、昔の感覚が鈍っていた…。だが、なんだかんだ言っても再会はやはり嬉しいものである。懐かしい笑顔に、昔の記憶が蘇る。私たちはセンター街の居酒屋に入った。

 

随分前に酒をやめた私はノンアルビールで乾杯。互いの近況を語りながら、懐かしい思い出話にも花が咲いた。彼によれば、今年1月に前の会社を辞め、現在は別の欧州企業の日本支社を立ち上げているという。会社登記を終えたばかりで、今は自宅兼オフィスから営業活動をしているらしい。日本企業2社ほどと商談が進んでおり、ようやく手応えを感じ始めたとのことだ。

そのうちの1件で、日本側とのコミュニケーションを支援してくれる人材が必要になったという。開発自体は欧州本社が担当するが、初めての日本顧客なので、単なる通訳ではなく技術的にも信頼を築ける橋渡し役が求められる。だが、まだ売上も立っておらず、正社員を雇う余裕はない。ということで、暇そうな(!)セミリタイア民の私に白羽の矢が立った、というわけだ。

 

正直、いつ化粧品や健康食品を勧められるのか?と身構えていたが、そうではなくてホッとした。話を聞けば聞くほど、むしろ面白そうである。週に1〜2回、顧客と本社をつなぐオンラインミーティングのサポートをするという。困っている友人を放ってはおけないし、20年来の仲でもある。おまけに私のことを頼ってきてくれたのは、悪い気分はしない。結局、引き受けることにした。

これでまた来年も「住民税非課税世帯」の枠から外れてしまいそうだが、それも仕方ない。5年ぶりに技術の現場に関わることになるが、技術翻訳だけでは得られない刺激がありそうだ。うまく彼の会社が日本で成功する一助になれれば、これほど嬉しいことはない。せいぜい時給をはずんでもらうことにしよう!

 

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